アメリカン・ポップスの名曲をジャズディーバがカバー カーメン・マクレエの「FOR ONCE IN MY LIFE」
カーメン・マクレエといえばエラ・フィッツジェラルド、サラ・ボーンと共にジャズの3大ディーバと言われていますが、エラやサラと比べてその知名度は今ひとつな感じがあります。低音でメタリックな歌声がやや一般受けしにくいのかも、と思うのですが、私は他の二人より断然カーメン・マクレエが大好きです。小学生の頃、音楽室の音叉をデタラメに叩くと体にジーンと響いてとても心地よく面白かったのですが、カーメン・マクレエの体に響き渡る声はそれと近い感覚を味わえるのです。
中でもポップスのカバーアルバム「FOR ONCE IN MY LIFE」は私の大好きなアルバムです。
アルバムタイトルこそ1曲目のスティービーワンダーのカバー曲から付けられていますが、このアルバムの特質すべき点はビーチボーイズのカバー、しかもわざわざペット・サウンズから選曲されていることだと思います。
ペット・サウンズはビーチボーイズの天才ブライアン・ウィルソンが他メンバーがツアー中に作り上げた、ポップスの次元を押し上げるかのような、非常に美しいアルバムですが、あまりの斬新さに当時はメンバーからもリスナーからも敬遠されたいわくつきのアルバムでもあります。
今でこそ歴史に名を残す名盤として名高いですが、当時セールス的に不振だったこのアルバムから「ドント・トーク 」と「駄目な僕」がカバーされているのです。
仮に、カーメン自身が選曲したとして、好奇心いっぱいのおばちゃんだったのでは…と想像してしまいます。
カーメンの低い歌声によって紡がれるペット・サウンズの楽曲は、ビーチボーイズの美しいコーラスとは真逆の美しさがあり、甲乙つけがたいものがあるのです。
できればペット・サウンズ全曲通してカバーしてほしかったと思いますが、もちろん他のカバー曲も素晴らしいです。
タイトル曲のFOR ONCE IN MY LIFEなどはスティービー本人の曲の出来を上回る完成度なのでは…と思ってしまいます。
CDはほぼ車のカーステで聴いているのですが、カーメンの歌声は圧倒的に夜がよく似合います。
仕事に疲れた帰路、このアルバムを聴いていると、沈んだ心は癒され、大変心地よくなって1枚まるごと聴き終わるまでドライブしてしまいます。
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